登記について(日本での拠点設立ガイド)

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登記について

日本への進出形態

外国企業の日本への進出形態は、大きく分けると次の4つになります。

駐在員事務所
駐在員事務所は、外国企業が日本で本格的な営業活動を行うための準備的、補助的行為を実施する拠点として設置されます。市場調査、情報収集、物品の購入、広告宣伝などの活動を行うことができますが、直接的営業活動を行うことはできません。また、駐在員事務所の設置は、登記する必要がありません。なお、駐在員事務所の名義で、銀行口座を開設すること、不動産を賃借することは、通常できませんので、外国企業の本社または駐在員事務所の代表者など個人が代理人として、これらの契約の当事者となります。

支店
外国企業が日本で営業活動を行う場合、支店か子会社(日本法人)を設立する必要があります。支店の設置は、外国企業が日本において営業活動の拠点を設置するための最も簡便な方法です。支店としての活動拠点を確保し、支店の代表者を定めた上で必要事項を登記すれば営業活動を開始することができます。支店は、外国企業の権限ある機関によって決定された業務を日本において行う拠点であり、通常は単独で意思決定を行うことを予定されていません。法律上は支店固有の法人格はなく、外国企業の法人格に内包される一部分として取り扱われます。したがって、一般的に支店の活動から発生する債権債務の責任は、最終的には外国企業に直接帰属することになります。なお、支店の名義で銀行口座を開設することができ、不動産の賃借をすることもできます。

子会社(日本法人)
外国企業が日本において子会社(日本法人)を設立する場合、日本の会社法で定められた株式会社、合同会社(LLC)といった法人形態から設立すべき法人を選択することになります。会社法上は、合名会社、合資会社という法人格も認められていますが、出資者が有限責任ではなく、無限責任を負うこととなるため、実際に選択されることはほとんどありません。法律上定められた所定の手続を行った上で登記することにより、各日本法人を設立することができます。子会社(日本法人)は外国企業と別個の法人となるので、子会社(日本法人)の活動から発生する債権債務に対して、外国企業は法律に定められた出資者としての責任を負うことになります。また、子会社(日本法人)設立の他に、外国企業が日本法人を利用して対日投資を行う方法としては、日本企業や投資会社などとの合弁会社の設立や日本企業への資本参加という方法もあります。

有限責任事業組合(LLP)
法人ではありませんが、有限責任事業組合を設立して、事業を行うこともできます。有限責任事業組合は、日本版LLPと呼ばれている事業体で、有限責任を負う出資者だけで構成される組合組織です。また、出資者同士の合意で組合内部のルールを自由に決定できる、組合自体には納税義務はなく出資者の利益分配に対して課税される、といった特徴があります。

拠点形態の比較

日本法人の設立登記手続き

子会社(日本法人)は、法務局に登記することにより設立します。登記申請の日が設立日になり、この日から営業活動を行うことができます。子会社(日本法人)設立手続のために必要となる書類の中で、外国企業の本国において準備すべき書類がいくつかあります。外国企業の概要を証明する書類、外国企業代表者の代表権限を証明する書類、外国企業代表者の署名の真正を証明する書類などです。
通常は、外国企業の定款、設立証明書、登記証明書などの公的文書や外国企業本国の公証人により認証された「宣誓供述書」などが利用されます。これらは日本において子会社(日本法人)の定款の認証手続をする際に必要となります。また、日本の金融機関に対して、子会社(日本法人)の資本金の保管と保管証明書の発行を依頼する際に必要になる場合もあります。資本金保管証明書は、依頼した金融機関が指定する特別口座に子会社(日本法人)の資本金全額を送金すると、その金融機関から発行される証明書です。なお、認証された定款も資本金保管証明書も、設立登記申請時に必要な書類になります。

子会社(日本法人)設立手続の一般的な流れ(株式会社)

1. 株式会社設立概要の決定(*1)

2. 法務局において類似商号の調査

3. 株式会社の定款作成

4. 親会社の登記証明書等の取得ならびに親会社の概要に関する宣誓供述書、親会社代表者のサインに関する宣誓供述書の準備(宣誓供述書については、本国公証人による認証が必要)(*2)

5. 株式会社定款の日本の公証人による認証

6. 銀行への資本金保管および保管証明書発行の申込み(*3)

7. 銀行の特別口座へ株式会社の資本金を送金

8. 取締役、代表取締役および監査役等の役員の選任

9. 取締役および監査役による設立手続の適法性の調査

10. 法務局へ株式会社設立登記申請(株式会社設立日)、法務局へ会社印鑑の届出

11. 登記事項証明書および会社印鑑登録証明書の取得(登記申請の約2週間後)

12. 銀行での会社名義の口座の開設

13. 日本銀行への株式取得の届出(業種によっては会社設立の前に届け出る必要あり)

※所要期間:会社設立概要決定後約2か月程度
(*1)決定すべき設立概要は、商号、本店所在地、事業目的、事業年度、資本金の額、株式の発行価額、株式譲渡制限規定の設定の有無、取締役会の設置の有無、取締役および代表取締役、取締役の任期、出資者およびその出資額などである。
(*2)日本に住所がある個人または法人が株式会社設立発起人となり、外国企業が株式会社の設立時株式の引受人となる場合(これを募集設立という。)には、これら親会社についての宣誓供述書が不要となることがある。
この場合、株式会社の設立時の株式を、発起人と外国企業が持ち合うことになるが、事後、発起人保有株式の譲渡を受けることにより、株式会社を外国企業の100%子会社にすることができる。
(*3)日本国内に銀行口座をもっている個人または法人と共同出資して株式会社を設立する場合、銀行に必ずしも資本金保管および保管証明書発行を依頼する必要はない。この場合、共同出資者の日本国内の銀行口座に資本金を払い込み、銀行が発行する資本金保管証明書の代わりに、株式会社の代表取締役による資本金全額の払込みのあったことを証する書面を提出すれば足りる。

支店の設立登記手続き

支店の設置を法務局に登記することにより、支店の営業活動を開始することができますが、外国企業の支店は、その外国企業に最も形態が類似する日本法人の登記要件に準じて登記することが求められています。最も形態が類似する日本法人を選び、登記すべき事項を整理するために、外国企業の定款、設立証明書、登記証明書などの文書を参照して検討することになります。さらに、支店の所在地、日本における代表者、支店設置日、貸借対照表の公告方法といった支店固有の登記事項を決定すれば登記すべき事項を確定することができます。
なお、支店の設置登記申請時には、登記事項についての証明文書を提出する必要がありますが、この証明文書は外国企業の本国の然るべき権限を持つ機関により発行された文書でなければなりません。在日大使館領事等により認証された登記事項についての「宣誓供述書」の活用が便利です。

支店設置手続の一般的な流れ

1. 支店登記事項の整理

2. 法務局において類似商号の調査

3. 支店の設置(支店設置日は任意の日付を選択可能)

4. 支店の設置に関する宣誓供述書の作成

5. 在日大使館の領事等による宣誓供述書の認証(1)

6. 法務局へ支店設置登記申請、法務局へ会社印鑑を届出

7. 登記事項証明書および会社印鑑登録証明書の取得(登記申請の約2週間後)

8. 銀行で支店名義の口座の開設

※所要期間:支店登記事項決定後約1か月程度

(1) 在日大使館が日本国内での手続を認めていない場合は、本国の公証人による認証が必要。